「ハートフルな「生(いのち)」の会話 “いのちのはじまり” のこと “心とからだ” のこと
小貫大輔先生(東海大学「教員・研究者ガイド」):東京大学とハワイ大学の大学院で性教育を学んだあと、ブラジルに渡ってモンチアズールでエイズ関連の活動、 JICA プロジェクトで自然分娩・⺟乳育児への⽀援などに携わる。2006 年に帰国して現職。大学では「ジェンダーとセクシャリティ」「人間学」などの授業を担当。日本性教育協会運営委員。 「性と文化」プロジェクト代表。各シュタイナー学校高等部にていろいろな角度からハートフルな話をされています
シュタイナー学園現職教員のための実践研究部門の中に、「包括的セクシュアリティ教育」というものがあります。
『包括的セクシュアリティ教育』
ユネスコをはじめとする国連諸機関が2018年に打ち出した国際的な性教育の考え方。性教育はセックスや生殖の仕組みについてだけ教える教育ではなく、人間関係やジェンダーについて学ぶことや、暴力から身を守り、健康と幸せのためのスキルを身につけることなど、広く「生きる力」を子どもに与えるための教育とされています。
8つの主要テーマが互いにつながり、ホーリスティックに一つの全体を成す構造が「包括的」と呼ばれることの理由だそうです。
- 人間関係
- 価値観、権利
- 文化とセクシュアリティ ジェンダーを理解する
- 暴力と安全
- 健康とウェルビーイングのためのスキル
- 人間のからだと発育発達
- セクシュアリティと性行動
- 性と生殖の健康
今回の小貫先生の講演では各分野の教育者をはじめ保護者の皆様、教員が参加し、沖縄のマリンブル―と海風に包まれながら、いろいろな角度からわかりやすくお話をしてくださいました。その一部を紹介します。
親から子へ、性について話すときの秘訣
小貫先生の講演は、参加型のワークショップ。まずは、異文化理解の一環として、様々な国における挨拶の仕方を参加者同士で体験しました。
お辞儀、握手、ほっぺたにキッスという3つの挨拶です。日本のように目を伏せて、体にも触れることのない挨拶はむしろ世界的にも珍しく、実際に身体が触れ合う挨拶には、人と人の距離を縮める文化的な仕組みがあると言われました。ワークショップでは、以下の問いについてまわりの人と話し合いました。
それぞれの家庭では「女性の性器のことを何と呼んでいましたか?」、続けて、「子どもに、赤ちゃんがどこから生まれてきたのか聞かれたことはありますか?」、「精子と卵子がどうやって一緒になるか、お子さんに話したことはありますか?」と、日本の家庭では話すのに躊躇するような質問が続きました。
このような性的な話題についての子どもの疑問に、身近な家族が答えてあげられないと、子どもは性のことは聞いてはいけないことだと察知して、結局、インターネットのアダルト動画から情報を得ることになりかねない。これは悲劇だと小貫先生は強調していました。
子どもが「性は汚くて、怖くて、いけないこと」と思ってしまう前に、身近な大人が、信頼関係の中で「大切なこと、素敵なこと、神聖なこと」として教えることはできないかと問われ、グループに分かれてこれらのことを話し合いました。
性について描かれた「絵本」についても話題となり、絵本は、あたたかい気持ちになることを基本として作られたもので、汚いもの、卑猥なものとして性を描写することはないとして、赤ちゃんが生まれてきたときのことについて描いた絵本をいくつか紹介されました。(配布された資料から一部抜粋)
表現方法にはいろいろあっても、絵本は基本的にみんなハートフルなアプローチ。小貫先生は、「この本がいいよ、とお勧めするよりも、各家庭でどう教えるのがいいのか と考えて、絵本を選んでいくのが一番大切なこと」とおっしゃっていました。
いのちのお話は、家庭から・・・これが子供にとって一番いいことだと何度も強調されていました。
自分が愛されて生まれてきたんだ、ということが家庭の中から感じられ、それが安心感につながる。これからクリスマスに向かってご家庭で「いのちのはじまり」のおはなしをされてはいかがでしょうか・・
10年生担任 工藤千秋